紆余曲折あってベビーシューズ

田中京商店の靴織*kaori*です。

今回は、足と靴のお話です。

以前、靴織*kaori*は婦人靴販売の仕事をしていました。

いろんな考えのお客様がいらっしゃいました。
『靴が足に触れるのが嫌だ』という理由で、ブカブカのサイズを選ぶ方、、、
『デザインが気に入った』という理由で、足に合っていない靴を購入される方、、、
足の骨の痛みや変形を自覚しながらも、足への負担が大きいデザインを選ぶ方、、、

靴織*kaori*としてはその靴をおすすめできない事や その理由もきちんとお伝えしますが、最終的に判断をするのはお客様です。
販売員の見解を聞いたうえで『買います』と言われれば、もう「かしこまりました」とお受けするしかなくなってしまいます。

そんなやり取りを繰り返すうちに、自分が理想とするものがハッキリと見えてきました。

それは、ある菓子メーカーの創始者が菓子作りに対して思うことと同じだったので、その方の言葉をお借りすると

『ほんとうに美味しいお菓子はカラダにやさしい』

これが理想だと感じました。

言い換えると

『ほんとうに美しい靴は、足にやさしい』

足に やさしい靴は、体にも やさしい。

これこそ美しい靴に違いない!と思ったのです。

足に悪影響を及ぼす靴は売りたくない!という気持ちが強くなる一方で、そんな靴でも売るしかない立場の販売員でいることにストレスを感じていました。
工場で作られた靴が店舗へ納品され、それを販売する。
店舗で出来る調整といえば、素材を伸ばして少し緩めるか、詰め物をして少し締めるか。
それ以上の調整をしたいとなれば、、、もう自分で作るしかない!!

極端な発想かもしれませんが、そんな流れで靴づくり業界へ飛び込み、まずは靴教室で座学や実習。
その後は靴工場でのアルバイトを経て、靴教室で出会った相方と二人でオーダーメイドの靴づくりを始めたものの、ここでもまた理想と現実のギャップに直面してしまいました。
履きたい靴と、それを履くための理想の足の形、それに対して現実の自分の足は、、、
理想と現実の妥協点を探りながら調整していく中で感じたこと、それは

『靴や革に対する正しい知識があれば、理想の靴をもっと長く履けたのではないか』

ということ。

正しい知識があれば、お気に入りの靴の劣化を遅らせることが出来たかもしれない。
そして、正しい靴選びが出来ていたら、足のトラブルで気に入った靴を諦めるような事態を減らせたかもしれない。

特に足の不調は、生活に影響するし、人生に影響するといっても過言ではないと思っています。
トラブルを抱えてから対応するのではなく、まずは足のトラブルを起こさないようにしたい。
そのためには、、、
大人になってから気をつける?
子どものうちから気を付ける?
いや、私は、赤ちゃんのうちから気を付ける必要があると考えました。

赤ちゃんの足の骨はまだ軟骨で、そこへカルシウムが付着して次第に骨になっていき小学校低学年ごろには骨が完成します。
足の骨が軟骨のうちは外的要因(足に合わない靴など)で変形が生じやすいけれど、逆にとらえると治せる余地があるということになります。
そして、骨が完成すると外的な力に対して強くなりますが、変形してしまった場合には治しにくいということになります。

小学生にもなれば靴が窮屈になってきたことや「足が痛い」「ズキズキ痛い」「ヒリヒリする」というように不調の場所や様子を言葉で伝えてくれますが、赤ちゃんや幼児はそんなことを教えてはくれません。機嫌が悪い、抱っこをせがむなど、足の不調以外の要求と同じ調子で訴えてきます。
このようにトラブルを言葉で伝えることが難しい時期は、ちょうど、足の骨が完成する前の時期と重なります。
足のトラブルを改善させる余地がある時期だというのに、本人はそれを的確に伝えることができない。
なんとももどかしい。
そのため、周りの大人の気付きが重要になってきます。
そんな時に、肝心の大人に知識がなくて間違った靴選びをしているようでは、子どもの訴えに気付かなかったり気付きが遅れたりしてしまいます。

正しい靴選びと革のお手入れを知っていただくために、靴織*kaori*にできることは?

これから歩き始める赤ちゃんのそばにいる大人へ、子どもの足に関心を持ってもらいたい。正しい靴選びをしてもらいたい。
そんな思いで、靴織*kaori*のこだわりが詰まったベビーシューズを作りました。

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◎こだわりの素材◎
・人体や環境に影響を及ぼす危険のあるクロムを一切使用しない、地球環境に配慮したラセッテーなめし製法でつくられた「やさしい革」を使用
・日本の皮革で唯一100%自給自足できる豚革を使用

◎赤ちゃんにも大人にも優しい7つの特徴◎
①肌に優しい革を使用
②履き口が大きく開いて履かせやすく、ベルト1本で簡単に着脱
③踵は硬めカウンターで安定、つま先はオブリーク型でゆったりのびのび
④やわらか素材で、屈曲部がしっかり曲がって歩きやすい
⑤外せるインソールでサイズチェックが簡単
⑥中底にも吸水性のある本革を使用
⑦踵外側のストラップは赤ちゃんにも握りやすく、自分で履きたい気持ちをサポート

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サイズは、ファーストシューズになるサイズで考えています。
赤ちゃんが履く初めての靴を通じて、靴選びや革のことをお伝えしていきたいと思います。

より広く伝わるように、このベビーシューズに無垢*muku*という名前をつけて
ジャパンレアザーアワード2024に出品しました。
応募数が過去最高ということで、サイトにはたくさんの革作品が紹介されています。
靴織*kaori*のベビーシューズも360度くるくる回して見ることが出来ます。
面白いですよ^^

余談ですが、
靴織*kaori*の第一子には、3歳になるまで自作の靴を履かせてきました。
サイズアップするたび型紙に改良を加えていき、良いものが出来上がったと思います。
その型紙を縮小してファーストシューズのサイズへ戻し、完成したのが今回の無垢*muku*です。

今後はラッピング材を用意して、販売に向けて準備を進めたいと思います。
靴選びのことや革のあれこれ、読み物を添えて。
“子どもの足を守り健全に育てることができる靴”を履いた子が元気いっぱいに育ち、大きくなったら自分の革靴をお手入れして大切に使ってくれる、そんな風に繋がっていくとよいなぁと思います。

田中京商店ではIRAKAWAブランドで革小物も制作しています。
こちらも大切にお使いいただけますと嬉しいです。

2024-10-02 | Posted in 製作実績, 靴織Comments Closed 

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